2010年03月15日

パンドラ・ケース よみがえる殺人(高橋克彦)

 高橋克彦の美術関連ミステリーでおなじみの塔馬双太郎の学生時代の仲間に関連する殺人事件の物語。既に塔馬の友人が出てくる「南朝迷路」や「風俗史の問題」等は読んでいたので、気になる一冊だった。文春文庫の初版が1991年と結構前の作品で、中々本屋で売っている処を見かけなかったのだが、先日の出張帰りの梅田駅の本屋でようやく見つけ、買い求めた一冊。

 最初の被害者が殺され、さらに犯人ではないかと匂わせていた人物が殺害され、という形で物語を読ませてくれるのは、ストーリーテラーたる高橋の実力通りで、最後まで一気に読んでしまった。ラストに真犯人の遺書で謎が明らかにされるという展開も、「北斎殺人事件」他でお馴染みと言えばお馴染み。ただ、前半の塔馬の冴えが少しもの足りないかな?チョーサクも、長編ではちょと喋りすぎというか何というか。

 チョーサク、リサは、この物語でも塔馬の良き相棒として出てくるが、物語の中盤までは、不協和音といおうか、十数年ぶりに会った友人だからそうなのだろうが、やや感情移入しにくい感があった。それが、ラスト付近、文中のリサの台詞にもある、「チョーサクって・・・変わったわ」という辺りにはすっかり馴染みのキャラになっている。そういう感覚を醸し出すことができるのが見事だ。

 それから、「大事な記憶を覚えている限り、俺達は変わっちゃいない」というチョーサクの台詞。記憶シリーズで、記憶の不思議さ、曖昧さの物語を描いている高橋が、この物語で書きたかったことの一つが、この昔の記憶にまつわる、記憶を相対的に見て、それとその人自身との関わりを描く、というところなのだろう。

 物語は悲劇なために、一連の浮世絵三部作にも似た寂しげなラストだが、それでも友人達の思いが十数年の時を遡ってもう一度蘇るというか、暖かいものが残るところが良かった。
 
ラベル:高橋克彦
posted by おだまさ at 00:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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